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  ここは「大腸・肛門、そして骨盤底の疾患」に特化した、ウェブ情報サイトです。大学病院でのスモールレクチャーに基づいて作られました。
  スモールレクチャーとは、学生や研修医に対してベッドサイドやカンファレンス室で行われる、臨床に即した小規模の講義で、自由な雰囲気で行われるものです。

大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル17


【ノロウイルス腸炎】

これは、2004年から始まる冬に、マスコミによって有名になった病気ですね。ある老健施設で集団発生があり、そのために4人の方が、短期間に亡くなってしまったの言うのは、まだ、記憶に新しいですね。(それ以後、毎年のようにこの病気で亡くなっています。誰かに責任を負わせたい、報道が目につきますね)

よく、「風邪がおなかに来た」といっていましたよね、昔。われわれ医者だって、よく、そういっていました。それが、原因を確かめれば、ノロウイルスであることが多いということですね。

ノロウイルスは、小型球形ウイルスの一種で、カキ貝による食中毒の原因のひとつとして、最初は注目されたのです。しかし、それよりも、冬に流行る、ウイルス性の下痢症の原因として、ポピュラーなものだったのですね。つまり、今年の下痢はおなかに来るといわれたやつです。

でも、普通は、原因なんて確かめませんよ。第一、風邪と同じくらい、いずれは治りますし、調べるのにも時間がかかり、たいていは、調べがついたころには、治っていますから。そして、どうせ治る病気の原因ウイルスを調べることに、健康保険が利きませんからね。

でも、あの当時(19951)、マスコミの論調は、原因を調べなかった、老健施設の責任者を、殺人事件の犯人みたいに報道されていましたね。あのように報道されてしまうと、もう、どうしようもありません。論理的な反論なんてできませんよ。かわいそうなものです。それに、4人の方が亡くなったというのは、事実なのですから。申し開きはできません。

さらに、ウイルスの専門家と称する人を、新聞社は、呼んできて、しゃべらせるのですね。こんな時期にマスコミの論調に棹差せる人なんて、そうはいませんでしたね。

でも、私も老健施設で何回か頼まれて、医師としていったことがあるのですけれど、老健施設というのは、80から90歳、あるいはそれ以上の高齢の方が、集団生活している場なのですよね。ほとんど寝たきりの方と、痴呆症(認知症)の方の比率がとても高くて、普通のわれわれの生活の中ではあのような方を目にしないのは、あのような施設に集中的に入っているという事情もあるのですね。あのくらいの高齢の方は、病気にならなければ、どうにかこうにか、健康ですけれども、ひとたび、風邪やインフルエンザにかかれば、風前のともし火なのですね。風邪は、こういう方には、万病の元といわれるとおりなのですね。人間の一生にはおわりがありますから。ガンや心臓病という、ある意味では劇的な病気にならなくても、人間の一生には、終わりがあるように決められているのですね。

あの事件は、4人の方が亡くなったのですけれど、本当は、その4人が、どのような方たちだったのかが問題なったのですね。風邪やインフルエンザにかかっても死ぬはずのない方だったのか、風邪にかかれば、冬を越せないような方だったのか。

生きる力のある患者さんの場合、水分補給目的で点滴をしてあげると、たいてい良くなりますね。1日だけ点滴をすると、翌日は外来に来ないのが普通ですよ。

それから、集団発生をしたことも問題視されていますが、たいてい、集団発生していますよ。小学校時代を思い浮かべてください。インフルエンザだって、風邪だって、クラス中、あっという間に、はやって、駆け抜けていったではありませんか。それは、誰かが悪いわけではなかったのですね。

でも、とにかく、ここでお伝えしなければならないのは、ノロウイルスの感染を防ぐのに、よく手を洗うという、きわめて単純で、当たり前のことが有効なのですね。覚えてください。「風邪」には「手洗い」ですよ。

でも、痴呆症の90歳くらいの方は、爪の間に便をためていることなんて良くあることなのですね。そういう方の介護は本当に大変です。

(これを書いたのが2005年だったのですが、2006年暮れに大流行してまたまた、マスコミで話題になりました。とにかく、予防は、手洗いです。)

   【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】

  大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャルの目次
001 このフェブサイトについて
002  なぜ、大腸・肛門・骨盤底の疾患に特化したホームページを作ろうとしたのか?
003  大腸ポリーがありますよ、といわれたら
004  大腸がんの話
005  22歳女性の肛門癌
006  大腸癌の危険率、そして、検診の確認の甘い罠
007  直腸カルチノイド
008  直腸カルチノイドの怪
009  潰瘍性大腸炎と大腸癌
009-2  潰瘍性大腸炎に大腸がんができやすいの?本当なの?
 010  クローン病
 010-2  大腸クローン病
 011  虚血性腸炎
 011-1  虚血性腸炎
 012  薬剤性腸炎=出血性腸炎
 013  抗生物質による偽膜性腸炎
 014   しばらく、感染性腸炎の話をします。
 015  O157腸炎 (O157大腸炎)
 016 トラベラーズ腸炎
 017  ノロウイルス腸炎
 017-2  胃は吐くために進化した臓器である
 018  MRSA腸炎
 019  骨盤炎 ダグラス窩膿瘍
 020  放射線性腸炎
 021  恐るべし、放射線治療後の膀胱
 022  閉塞性大腸炎
 023  腸閉塞と例え話あるいは、例え話の閉塞状況
 024  急性虫垂炎の24歳の女性
025   シマウマのような12歳の少女の虫垂炎
 026  卵巣がんのダグラス氏窩転移
 027  過敏性大腸症
 028  偽性腸閉塞症
 029  慢性便秘
 029-2 便秘ですか
 029-3
 大腸は便秘するためにある。
 030  巨大結腸症とS状結腸過長症
 031  肛門病スペシャル
 032
 肛門病スペシャルの名にふさわしい、ザ裂肛
 033  内痔核 その対称性の乱れ
 034  痔と直腸癌
 035  内痔核の話を続けましょう。
 036  痔と直腸癌 痔という病気
 037
 直腸異物
 038  肛門管の話を続けましょう
 039  内痔核の分類  Goligher分類
 040  骨盤底筋群ということばが好きな理由
 041  陰部神経のドグマ
 042  陰部神経の新しい検査法の開発には理由がある
 043  陰部神経潜時測定で何がわかったのか
 044  肛門を評価する(1)マノメトリーという准基本検査の罠
 045 肛門を評価する(2)デフェコグラフィー
 Defecography 排便造影)について
 046 肛門の“8の字ダンス”
 047  ポリープをとってほしかった
 048  大腸ポリープに対する切除法 blood patch EMRという方法
 049
 別稿 大腸ポリープに対する安全な新しいポリペクトミー(EMR)の方法
 050  診療の秘訣 ブラッドパッチEMR
 051 打撃フォームを変えるにも等しいこと
 052  欠番
 053  消化器外科医の実力
 054  新聞や雑誌に載る「病院の実力」の意味するもの
 055  セカンドオピニオン ブルース
 056 セカンドオピニオン 異聞
 057  不信感という時代のキーワード
 058  そう説明してくれればわかります
 059  セカンドオピニオン異聞 裏の裏
 060  文系のための医学誌
 061  包茎は手術するべきか、受けるべきか。わたしの裏技手術
 062  太ることと大腸癌
 063 さいたま新開橋クリニック
 064   直腸癌は疫学的に異なるカテゴリーに属する
 065  大腸癌の原因は肉食???本当に本当なの?
 066  盲腸ポート
 067  最善を尽くしましょうと請け負っていた外科医が
 068  病気が顔を変える