【陰部神経潜時測定で何がわかったのか】
陰部神経の終末部だけの潜時測定と、すべての部分の潜時を測定することによって、なにがわかったのか、をお話します。
前の章で、お話した、セントマークス病院が開発した、PNTMLと、私が開発した、PNCMLの二つの検査によって、以下のことがわかりました。私が書いた本からの引用です。
『PNTMLとPNCMLで何がわかるか?』
この2つの検査で、骨盤底の生理が次々と明らかにされてきた。代表的なものだけ列記する。
1.中年以降の女性に多くみられる特発性便失禁症の基礎には、陰部神経伝道時間を延長させるような陰部神経障害が存在する。(一方、近年、肛門内超音波検査で検出できるような括約筋の潜在的裂傷の併存がクローズアップされ、特発性便失禁症の多因子性が理解されてきた。)
2.経膣分娩によってPNTMLが遅延し、また、恥骨直腸筋や深部外肛門括約筋のような腹腔側の骨盤底筋群を支配する神経のPNCMLが遅延することが明らかとなった4。つまり、分娩によって、腹腔側で末梢側の陰部神経枝が障害を受けやすいということである。いっぽう、帝王切開ではPNTMLもPNCMLも影響をうけない。
3.強いいきみの後、一過性にPNTMLは延長する。(PNCMLではデータがない。)
4.便失禁症に対して、肛門前方修復術や後方修復術などが施行されるが、その成績は、術前PNTMLの成績の良し悪しに左右され、神経障害のある例では、神経障害のない例に比較し、術後成績が悪い。(PNCMLではデータがない。)
【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】