今までやっていたことを今までどおりにすることは、そこそこの技術(といっても、専門的な技術でこれをマスターするのは大変なことです)を持っていれば出来ることです。これが出来てこそ、専門医です。
しかし、良いとはわかっていても、今までのスタイルを変えることは大変なことです。たとえば、打撃フォームを変えたために、スランプに陥る野球選手やゴルフ選手はよく目にするところです。新しい方法を導入するとは、医者にとって、野球選手が打撃フォームを変えるにも等しいのです。
でも、常に新しいことを導入し続けなければ、野球であればダメなバッターになることを意味しますし、専門医であれば、名ばかりの専門医であることを意味します。
新しい技術をスムーズに導入すること。
新しい技術をスムーズに導入すること。これは普段どおりのことを普段どおりにつつがなく行うということとは、別の次元の技術です。これは、誰にも彼にも要求すべきものではありません。
医療では、患者さんの目の前に今いるお医者さんに、安全性が要求されるわけですから。完全には選べないのですから。
では、一歩進んで、話し変わって、さて、新しい技術を開発するには、どのようなことが必要でしょうか。
医学生と若い医者のこのような質問に答えなければいけないのですが、本当のところはわかりません。
ただし、言えることは、若い医師は、職人のように、一人前を目指して努力し、次に、一流を目指して努力し、その過程で、工夫をかさねる。これはまじめな医師なら誰でもそうです。でも、新しいことを開発する人は少ない。
しかし、結果として、開発成功の経過で、さらに別の次元の技術を手に入れていることは確かです。職人がそうであるように、一流のさらに上を行く技術が手に入るのは確実です。
現代では、医術は、魔術ではなく、科学です。(これは、正しい)。科学とは、誰がやっても同じ結果になることだと、医学教育では教わります。(これも一部正しい。)論文でも、方法をしっかりと記述し、誰がやっても、診断や治療が同じようになるように書きます、私もそのように書きます。
しかし、本当はうそです。誰でも、これはうそだと知っています。料理に、旨い、下手はあります。大工だってそうです。絵も字もそうです。音楽の演奏もそうです。ほとんど生まれつき、ひとは、身のこなしが違います。器用な人なら、苦もなくできることが、そうでない人にはできないことは良くあります。
よく、症例を何例以上経験しているからすばらしいと、病院評価や医者評価をしている新聞を見ます。ある程度は正しい。しかし、みんな知っていることですが、本当はそれだけではうそになります。
器用なやつは器用だし、そうでない人はそうでないのです。でも、そのようなことを誰も言い出せません。不思議です。でも、誰でも知っていることです。
20年草野球をしていても、その人が大打者でないことは、確かなことです。
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