【最善を尽くしましょうと請け負っていた外科医が】
このごろでは、手術の合併症などに社会の目が厳しくなっているという社会情勢がありますので、たとえ1000分の1の危険率でも、それを強調して医師側はお話しすることがあります。また、少しうるさそうな患者さんには、外科医が手術する意欲をなくしているというここ数年の事情があります。
たとえば、100分の1の危険率のある手術をして10分の1助かるかもしれない場合、私は手術するべきと思うのですが、10分の9は手術をしても病気で亡くなるわけですし、100分の1の確率で裁判になったり、警察に調べられたりという状況を想像すると、多くの外科医は、手術する意欲を失ってしまっています。また、術後の回復が遅ければ、夜も患者に付き添って何日か費やさなければなりません。その意欲が、ここ数年、とみに外科医から失われています。当たり前のようにしてやっていたことが、不思議なことに、非常に苦痛に感じるようになってきています。この不思議な現象は、日本全体でおこっており、全国の外科医に会うたびに、皆、同じ感想を持っています。アメリカで20年前に見られた現象が、ほんとにここ1-2年加速度的にあらわれてきて、まさに、医療崩壊です。
一昔前なら、最善を尽くしましょうといって、手術を請け負っていた多くの外科医が、その熱意を失いはじめているのです。
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