新肛門手術について Cclinic guide

直腸がんや肛門がんでも人工肛門(ストーマ)にならない方法があります。

 第4章  
ストーマ(人工肛門)のない生活


この新肛門手術をすると約 6ヶ月後に新しく作った肛門括約筋が動き出します.それを確認してから、ストーマをなくし、新しい肛門を使い始めます。
つまり、この手術を受けた方々は、すべて、一時的にストーマを経験し、自分で新肛門と比較できるのです.これは、この手術に対する、もっとも厳格な評価ということができましょう。

2003年3月3日までの集計で、この手術を受けられた方は、22人です。(註:2005年11月20日現在で、新肛門手術の1期目までを受けられた方は37名です。)
22人のうち、15人の方が新肛門で生活されました。また、手術間もない方が3人、新肛門の使用を待っています。
しかし、不幸にも、22人のうち、2人が、創部の感染と会陰部に移動させた腸管の壊死に起因する術後合併症がもとで、新肛門を使わずに、永久のストーマとなってしまいました。
また、他の 2名は、手術後まもなく癌が再発し、その治療のため新肛門の治療を断念しました。
つまり、今日までに、15人の方が、人工肛門(ストーマ)から逃れて、新肛門の生活を経験したのです。

15人のうち、新肛門の生活が 2年以上になる10人で、その術後の生活を評価しました。まず、満足度に関しては、8人(80%)がストーマの生活より、新肛門の生活のほうが良いと評価し、2人(20%)が、なんともいえないと、自己評価しています.ストーマが良かったとか、ストーマに戻りたいという方は、まだ、1人もいません.(この手術の利点のひとつは、希望すれば、いつでもストーマに戻ることができるのです.もちろん手術が余計にひとつ必要にはなるのですが.)

しかし、満足度が高いからといって、排便状況が100点満点というわけではありません.どんなときでも完全無欠の、20歳のころのお尻を期待されると、その臨床成績は見劣りがします。でも、時々下着を汚すかもしれない、おじいちゃんやおばあちゃんのお尻でも良いという考えでしたら、十分に勝ち目のある手術であると考えています.神様が創ったお尻に近づきたいというのは、大きな願いですが、今、現実に競っているのは、ストーマと新肛門とどちらが良いかという点です。ストーマとの比較では、実に80%の方が新肛門に軍配をあげ、20%の方が意見を保留しているというのが、この新肛門の現状です。

今までの患者さんの許可が得られれば、生の声をこのサイトで紹介していくことも考えています。

(これらの結果は、以下のアメリカの外科専門誌「サージェリー」に公表されています。

T.Sato et.al. Long-term outcomes of neo-anus with a pudendal nerve anastomosis contemporaneously reconstructed with abdominoperineal excision of the rectum. Surgery 2005; 137: 8-15)(2015年1月現在では100名を超える方にこの手術を行っています)


ストーマになるかもしれない方、また、ストーマから逃れたいと考えている方には、この手術のことを知ることが大切と考えて、このホームページを公開しました.

下のエックス線フィルムは、デフェコグラフィーといって、便と同じ硬さの造影剤を直腸肛門部にいれて、排便の状況をみた、検査の写真です。アニメーションになっていますので排便の様子がわかるかと思います.
アニメーションは5枚のレントゲン写真からなっていまして、最初の1枚目が、リラックスしているときのもの、2枚目が、便を我慢してきるときのもの、そして、3枚目から5枚目が排便しているときのものです.便を我慢するときには、肛門管の長さが長くなり、また、排便のときには、括約筋がリラックスして、排便が進んでいるのが観察できます.


デフェコグラフィー(排便造影)





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連絡先:
この治療法は、1995年当時勤務していた自治医科大学附属病院で世界第1例が施行され、20例ほどの経験の後、転勤先の国際医療福祉大学病院で症例が重ねられました。
2008年1月からは、新肛門手術に特化して独立した、さいたま新開橋クリニック(大腸肛門ペルビックフロアーセンター)にて、手術を行っています。奇しくも、外科医Milesの記念すべき発表から100年を経ての、小さな抵抗であります。

さいたま新開橋クリニック (電話 048-795-4760)  佐藤知行   


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目次
扉の言葉
第1章 直腸がんを治し人工肛門を避ける(大腸がんの説明)
第2章 人工肛門をなくす手術が開発されるまで
第3章 人工肛門をなくす手術の概略
第4章 人工肛門のない生活
第5章 文献紹介
第6章 自己紹介に代えて
第7章 すでに人工肛門を付けている方へ