【恐るべし、放射線治療後の膀胱】
放射線治療後に直腸癌の手術をされ、肛門まで切除されて、人工肛門をつくった男性の新肛門再建手術を行なったことがあります。
肛門を再建するためには、まず、もともとあった肛門の位置まで、腸を腹腔内から下ろさなければなりません。その腸が通るルートは、膀胱の後で仙骨の前ということになります。
ところが、放射線の治療を徹底的にされた方では、膀胱が石のように硬くなります。
他県の医科大学附属病院で、上のような治療をされた男性が私のもとへやってきて、肛門を再建することになったのです。手術をしてみると、驚くべきことに、膀胱が石のように硬く、同様にもともと石のように硬い仙骨との間で、腸の通るべきルートを作ることが出来ませんでした。この男性の場合、新肛門は造りようにも造れなかったのです。
さて、術後、膀胱をレントゲン検査で、造影してみました。すると、膀胱は、大きく膨らむには膨らむのですが、今度は、注入した造影剤を吸引して抜いていくとあるところから、小さくなるには、かなり抵抗があり、造影用の注射器が抜けると、そこから空気が戻って、ぽんっと、自然に膀胱が膨らむのです。何たる硬さの膀胱でしょう。
私は、知識としては、放射線治療後の膀胱は萎縮性膀胱といって、膀胱容量が小さくなるのは知っていましたが、この手術をしなければ、感覚として、このことを知ることはなかったかもしれません。
恐るべし、放射線治療、です。
たしかに、放射線治療にはメリットがあります。しかし、副作用との綱引きで、その本当のメリットは決まってくるのです。
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