【巨大結腸症とS状結腸過長症】
この章では、巨大結腸症と結腸過長症について、話しましょう。
結腸が巨大であるとは、管の臓器である結腸が太いということです。つまり、「太い」ことを、大腸肛門病学では、太いとは言わずに、『巨大』といいます。そして、「長い」ことは、巨大とは言わずに、長すぎる、つまり『過長』といいます。
では、長くて太い場合はどういうのかって言う疑問がわきますね。それは、お恥ずかしい限りなのですが、巨大といったり、過長といったり、いい加減なのです。
いいえ、本当は、いい加減ではありません。専門家は、(えへん!)使い分けています。
では、どんな風に、使い分けているかって言うと、これが、また、厳密に使い分けているのです。
こんな風です。巨大結腸症で、つまり、太い結腸が次第に長くなって過長になったものは、巨大といって、一方、結腸過長症で、つまり、長すぎる腸が次第に太くなっていったものは、過長というのです。
どうです、明快でしょう。はじめ太ければ長くなっても巨大で、はじめ長ければ太くなっても長いと呼ぶのです。
でも、はじめの姿がわからなかったら、どう呼ぶのかですって。
それが、また、明快なのです。はじめ太かったのだろうと考えられたら、太いから巨大なのです。そして、はじめ長かったのだろうと考えられたら、過長なのです。
どこまで行っても、専門家というやつは、明快で、困り者ですね。
以上は、かなり、学者様然とした専門家を揶揄した説明でした。失礼。
本当は、巨大結腸症と結腸過長症は、異なる疾患の単に名前であり、名前だから、巨大結腸症で腸が長くなっても過長という言葉は使わない、同様に、結腸過長症で腸が巨大になっても巨大とは言わない。病名は変わらないのですね。
言葉遊びをしただけかとお思いですか。
実は、これが、かなり、臨床上、問題になること、つまり「核心」というやつを突いているのですね。
実際の患者さんが現れた時、まず、最初に診察するのは、専門家でない、普通のお医者さんですよ。その、お医者さんが、レントゲン写真を撮って、長くて巨大な結腸を見たら、どういうと思いますか。見たとおり、巨大だと思えば、巨大な結腸だから、巨大結腸症!というかもしれないし、博物誌の「ヘビ、長すぎる」よろしく、「腸、長がすぎる」、と思えば結腸過長というかもしれません。この2つの病名は、見たままを病名にしたような種類の病名なので、現実のお医者さんが、見たままに病名を口走ってしまいがちになる病気なのです。つまり、誤診です。専門家でないそのお医者さんは、見たとおり思ったとおりの事を、悪意なく、口にしただけで、でも、誤診です。
長くて、太い腸を、どう呼ぶか。長いというのか、巨大というのか。実は、形容詞の問題じゃなかったんですね。
さらに、問題を複雑にしているのは、二つの疾患が、互いに関連しあっていることです。しかし、この先のことは、かなりむずかしいことで、すべての専門家の、同意を得られてはいないこと。科学的な論文で語ることですので、ここでは、ここまでの話にします。
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