【シマウマのような12歳の少女の虫垂炎】
草原にテントを張り、野営する。その翌朝、テントの中から、馬の足音といななきを聞いて、あなたは、どんな馬が近づいていると考えるでしょうか。
もし、シマウマを考えるのならば、あなたは現実から離れた感覚を持っています。つまり、現実の仕事をうまくやっていくには、かなり危ない人だということです。
to think Zebura
シマウマを考える。とは、臨床医にとっては、もっとも注意しなければいけない感覚です。
シマウマは、とても有名だけれども、それは、動物園か動物図鑑での話。
で、そんな馬が、テントの外を走っていると想像するのは、馬鹿げています。いないことはない馬だけれども、普通はいないのです。
12歳の少女の右下腹部痛。これを診て、大腸憩室炎を考えるのもそれに似ています。大腸憩室炎は、19世紀には西洋でも東洋でもほとんどお目にかからなかった病気です。それが、20世紀になり、西洋で増えてきたといいます。そして、日本でもここ20年増えてきました。それでも、40歳より若い人ではまれなのです。教科書にもそう書いてあります。(私も、10年ぐらい前に、そう書きました。) ですから、12歳の少女の右下腹部痛を診た時、大腸憩室炎を考えるとしたら、それは、シマウマを考えるのに似ています。
でも、このごろ確かに憩室炎が増えています。20歳ぐらいでお目にかかることは、珍しくなくなってきたというのが私の印象です。
もしかすると、近い将来、12歳の右下腹部痛でも大腸憩室炎を考えなければいけない世の中になるかもしれません。シマウマが、動物園から街に出てくるかもしれないのです。
確かに。街に響くひずめの音なら、シマウマのものである確率のほうが高いのかもしれませんね。
Think Zebura!?
大腸憩室症は、ストレスと関係した、大腸の運動機能異常にもとづく病気であると考えられています。そんな時代なのですね。
【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】